幼少期〜20代：人に何かをしてあげたいという想いが仕事へ

1967年、関東生まれ。
幼稚園、小学校と転校が続き、その度に周りから好奇心で見られるのが嫌で控えめな性格に。運動が苦手で、同級生の多くが文集に「将来の夢は野球選手」と書く中で、近所の本屋が好きで「本屋になりたい、雨が降ったらビニール傘をサービスしたい」と語るような子供でした。人と競うこと、目立つことより、「人に何かをしてあげたい」と思っていたようです。

幼少期で一番の楽しみは、家族でのハイキング。足腰が鍛えられ、マラソン大会で上位に入るようになり運動に目覚めました。競う相手が自分というのも、性格に合っていました。おとなしい自分から脱却、自信を持ち始めます。

地元の中学を経て、高校は県立の伝統校へ。伝統校の指導スタイルは自由放任で、何となく勉強していましたが、それでは大学に受からないと思い、時間の使い方や目標の捉え方を自分なりに工夫し始めました。「何に問題があるかを自分で考えて実行すること」が性に合っていて、その最初の経験だったような気がします。

工夫した勉強方法が功を奏し、希望の大学へ入学。数学が得意で、当時はまだ主流ではなかった「数学を経済の分析に使うこと」に興味を持ちました。幼少期に抱いた「人に何かをしたい」という想いは「社会に貢献できる仕事がしたい」へと代わり、就職先には銀行を選びました。

銀行では多忙を極めましたが、問題を見つけて解決する考え方が仕事に役立ちました。新商品を扱う部門に配属されたため、前例にとらわれず行動できたのはラッキーでした。成果を上げることで希望の仕事に近づいていきましたが、次第に入社年次の壁にぶつかり、思うように仕事も責任も増やせません。当時はまだ少数派だった転職を決意。30歳で外資系企業へ移ります。

米系の会社へ転職〜コーチングでチームを作る

米系の会社では、国籍も専門性も違う同僚と働きました。これまでの経験にこだわるのではなく、自分が持つどの能力を発揮したらチームに貢献できるかを無意識に考えていました。この時の感覚が活きて、部長職についたときには、チームの各メンバーの専門性を伸ばしながら同じゴールを目指していくという手法を取り入れました。

入社時、日本では一部の人しか知らなかった会社が、数年後には業界トップクラスに躍進していました。チーム拡大のため、「特定の分野で自分にはない高い専門性を持つ人」を数多く採用しました。

部長職である自分の役割は、個人の能力を引き出し、伸ばすこと。チーム全体のゴールと個人のゴールを同時に達成するために、コーチングスキルが必要でした。プロのコーチングを受けながら、業務時間外でもチームマネジメントの勉強をしました。毎週末の居場所に図書館が加わりました。

多忙な中で、運動はいつも自分の相棒でした。自転車レースへ出場、スキー1級の取得、マラソンで自己新を更新など、挑戦することが楽しみでした。運動そのものが気分転換になり、上達のための戦略を考えるのが好きでした。

充実した日々でしたが、突然体調に異変が起きました。突発性難聴でした。症状が落ち着いても、仕事で無理をすると再発を繰り返しました。だましだまし対処していた頃、妻のすすめで始めたピラティスが体調の安定に効いていることに気づきます。

振り返れば自分が好んだ運動は、タイムやコースへの挑戦など、競争と成長を前提とする「ビジネスと同じ脳を使うもの」ばかりでした。でもピラティスは、他人との競争ではなく、自分を客観的に観察して気づきを引き出す一面があります。運動することに変わりはなくても、意識の持ち方が全く違います。

会社帰りにピラティスに通うようになり、もっとピラティスを深く知りたいと思って、会社勤めのかたわら妻と一緒にインストラクター養成コースを受講しました。この時点では、ピラティスを本業にしようとまでは考えていませんでした。

セカンドライフのはじまり〜スタジオの設立

ピラティスの指導者資格を得ると、会社員をしながら副業でピラティスの指導を始めました。

金融の仕事は、自分にとって面白い存在であり続けましたが、経営陣に加わってみると自分自身がプレイヤーとして関わり続けることが難しくなっていました。経営者として、顧客のニーズに応えながらも株主のニーズにも応えなくてはならない難しさにも直面していました。

ピラティスの指導は、「目の前の人に貢献できる」という充足感がありました。そして、妻と目的意識を共有できるワクワク感もありました。「自分たちが目指すレッスンのあり方」という将来の夢についても話し合うようになりました。

金融業界では、昔から早期に退職して自分の道に進む人が多いです。自分も「一度しかない人生、やりたいことをしよう」と思ったものの、収入源が変わるのは不安でした。しかし、どんな仕事でも始めてから形になるまでには数年の歳月がかかります。早いうちに起業しないとその先の世界が拡がらないと思い、40代後半に退職してOla Pilates Studioを設立しました。

開業時から目指していた「運動が苦手な人でも通える、少人数でアットホームなスタジオ」は、多くの人に喜んでもらえましたが、次第に自分たちには一つの限界が見えてきました。

グループ形式のレッスンでは、ひとりひとりに寄り添う気持ちで教えていたとしても、「ひとりひとりのためのレッスン」には完全にはなっていなかったのです。

グループに対して教えるのは、効率が良い一方で、個性に合わせることはできません。運動を教えていると、身体の個性だけでなく性格や考え方などの個性も大きな要素であると感じます。また、スタジオで過ごす時間だけでなく日常生活で何に気を付けるかが、受講者の成長や変化に大きく影響することもわかってきました。

そんなときに偶然出会ったのが、「スタジオセッション」というレッスン形式でした。個性によって指導方法を変えるやり方は、会社員時代に経験を積んだチームマネジメントと同じだと感じました。スタジオセッションに移行することに躊躇はありませんでした。

Nahokoも自分も、これまでの経験を最大限に活かして受講者ひとりひとりの「今」に合わせた指導を行っています。自分たちも日々のレッスン指導から多くを学び、成長していく時間を楽しんでいます。