『Ola式指導メソッド』のお話:(1) 私たちが教え方にこだわる理由
Nahokoです。
構想に時間がかかってしまいましたが、昨年11月にUPしたブログ記事をさらにふくらませ、シリーズで書くことにしました。
テーマは「Ola式指導メソッド」について、です。
第1回: 私たちがなぜ「どう教えるか」にこだわるのか
私たちOlaピラティススタジオでは、「Ola式指導メソッド」という独自の考え方で、日々のレッスン指導を行っています。
2022年の初めにスタジオホームページを全面的にリニューアルした際、スタジオの特徴として「私たちがこだわっている2つのこと」をしっかりご紹介する内容にしました。
こだわりのひとつは、「スタジオセッション」というセミプライベート形式のレッスン。
そしてもうひとつは、「Ola式指導メソッド」です。
スタジオセッションについては、このやり方でレッスンを行っている他の施設をほとんど見かけないという理由により、この形式の利点や事例・エピソードなどを時折ブログで紹介してきました。
一方、「Ola式指導メソッド」についてはというと、日々あまりにもいろいろな事例がありすぎるために思うことが多く、昨年秋に一度ざっくりとブログ記事にしてはいましたが、全体像をまとめられずにいました。
2024年はスタジオ開業から10周年の節目を迎えるので、そろそろ本腰を入れて、これまで「Ola式指導メソッド」にこだわってきた私たちの思いをどんどん文章化していきたいと思います。
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さて、「指導メソッド」っていったい何のこと?と思われる方もいらっしゃるかもしれません。
ホームページでは「私たち独自の指導法」と紹介してきましたが、もう少し具体的に言うならば、「教え方やコミュニケーションのくふう」です。
指導メソッドに長らくこだわり続けていると、そこから得られたものがたくさんあります。
いくつか挙げてみると…
- お客様が着実に、そして驚異的に、変化・成長するようになった
- 通い始めてから、思いがけない能力や才能を目覚めさせるお客様が増えた
- お客様ひとりひとりと確実に信頼関係を築けるようになった
- 数年以上通ってくださる長期的な会員様が増え、退会者が非常に少なくなった
- 退会者によって空いた枠は、会員様からのご家族やご友人の紹介だけですぐに埋まるようになった
2022年から設けた新規入会希望のウェイティングリストは登録者が増え続けており、現時点で新規入会は1年以上お待ちいただいている状況となりました。
私たちはホームページ以外の広告や宣伝は一切行っておらず、SNSもアカウントはありますがほぼ使っていません。
月額会費の縛りはありませんし、回数券制なのでどのタイミングでやめるのも自由です。
一時的なキャンペーンなどで大幅に料金を割引したりもしません。
それでもお客様は定着し、熱心に通い続けてくださっています。
年齢を重ねてライフステージが変わっても、「もう自分の人生はピラティスなしには考えられない」「この先の人生もずっとこのスタジオに通いたい」と言ってくださる方がたくさんいらっしゃいます。
熱心に取り組み続けて成長していくお客様の姿を見ると、教える側の私たちは毎日心から感動したり感激したりの連続で、さらにより良い指導をしたいという意欲が湧いてくるのを感じます。
教える仕事を選んでよかったとつくづく思いますし、日々やりがいと充実感を得られる仕事ができる幸せを感じています。
「教える側が喜びを得られる」
これこそが、指導メソッドにこだわることの最大のメリットなのかもしれません。
その上さらに「集客を頑張らなくても会員様が定着し、スタジオの経営が安定する」というおまけがついてくるので、なおさら喜ばしい限りです。
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「Ola式指導メソッド」の中身についてお話を始める前に、私たちがなぜ「教え方やコミュニケーションのくふう」にこだわり始めたのか、背景について書いておきたいと思います。
私たちの仕事は「先生」と呼ばれることが多いですが、「先生」という仕事は「教える相手」がいるからこそ成り立つ仕事です。
先生がひとりで言葉を発しているだけでは「教えている」ことにはなりません。
発した言葉を受け取ってくれる相手がいるからこそ、「先生」になりえるわけです。
「教える」こととは、突き詰めて言えば「自分の言葉を相手に届かせて、相手の中に行動変容を起こすこと」。
教えたい内容があるならば、相手にどんな言葉で届けるか、どうしたらうまく伝わるかを考えなくてはいけません。
何故なら、言葉が相手に届かなければ相手の中には何の変化も生まれず、「教えた」ことにならないからです。
つまり「先生」という職業である限り、相手にどう教えるのかというコミュニケーションを工夫する視点を持つのはごく当たり前のこと。
むしろ、教え方やコミュニケーションを工夫することこそが「先生という仕事の根幹をなす部分なのではないか」とすら思います。
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しかし、教え方やコミュニケーションの工夫という視点は、意外と見過ごされがち・軽視されがちであるようにも思います。
たとえば、トレーナーやインストラクターが「何を教えるか」について学べる場所はたくさんあるのですが、「どう教えるか」を学べる機会は滅多にありません。
ピラティスのインストラクター養成コースを例に挙げると、コースで学べるのはピラティスに関する歴史などの情報や機材のあれこれ、エクササイズの種類・方法や身体に関する知識などばかりで、「実際に人間相手にどう教えたらいいのか」という方法について具体的に学ぶことはほとんどできません。
ちなみにピラティスの世界には「流派・団体」というものがありますが、私自身が初めて養成コースを受講する前に完全に誤解していたポイントとして、流派や団体とは「指導に関する技術論の違い」によるものだと勝手に思っていたため、養成コースを受講したときは正直驚きました。
「指導法」に何か流派や団体独自の技術論があるわけではなく、教え方についての講義は一切ないので、先輩の指導を観察する「オブザベーション」で学ぶのが普通です。(オブザして先輩の真似をするところから始まるため、次第に誰もがその流派の似通った雰囲気になっていくのかもしれませんね…)
先輩のオブザベーションをしながら自分の指導実習時間を積み重ねるうちに、経験値が増えて各自がなんとなくうまいこと教えられるようになっていく、と考えられているのかもしれません。
真似や慣習に、自分なりの経験や感性・勘などを加えてまとめたものが、「自分の教え方」になっていく。
教え方を習うわけではないので、最も簡単なのは教科書に載っている言葉や先輩が多用する定番の表現を使って教えることで、まるで台本かのような台詞回しばかりが上達していく人も珍しくありません。
でも、定番の表現にとどまり続けて「相手に届けるため・伝わるための言葉」を探す努力をしないでいると、相手の中に思うような変化・成長は生まれにくいですし、信頼関係づくりもうまく進まなかったりします。
実際にインストラクター職の方々のお悩みとして、「生徒さんとの関係づくりが苦手」とか「どう成長させたらいいのかわからない」といった話を何度か聞いたことがあります。
そのうち、生徒が伸びないのは教えている「中身」が悪い・足りないせいだと思ってしまい、知っているエクササイズの種類を増やす、新たな分野の資格を取る、かたっぱしからいろいろなセミナーやワークショップに参加する、といった方向に自分の時間と労力(とお金!)をどんどん投資していくという無限ループにはまって行ったりもします。
「先生」とは専門分野に詳しくなければできない仕事なので、知識面を強化する努力を続けるのは当然のことです。
しかし、どんなに肩書を増やして知識を仕入れたとしても、それを相手にうまく伝えることができなければせっかくの知識を活かすことができません。
どの分野であれ、「あの人は優秀な先生・指導者だ」とか「名コーチだ」と言われるような先生は、「教え方がうまい」「生徒がどんどん育つ・伸びる」「生徒の才能を引き出すのがうまい」などといった部分が高く評価されているわけです。
知識や技術にどんなに秀でていたとしても、それを生徒にうまく教えることができ、生徒がどんどん育って伸びていくという結果が達成されていなければ、「優秀な先生」とは呼ばれません。
(名選手が名コーチになるとは限らない、とよく言われたりしますよね…)
「優秀な先生」になりたいのなら、専門知識を深めたり広げたりすることに注力するばかりではなく、「どう教えるか・どう伝えるか」に思いを巡らせて「教え方・コミュニケーションを工夫する」という視点を持つことから始まるのではないでしょうか。
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私自身の実体験で、初めての養成コースで指導実習に入り、目の前の生徒さんにいざ教えようとしたときの話です。
とりあえず先輩が使っていた言葉を台本にして思いを込めて喋ってみたけれど、目の前の人にはあまり伝わらず、ポカンとされたり、困惑していたり、うまく動けなくてつまらなそうな顔をさせてしまったり…
何かがおかしい、一体どうやって教えたらいいのかと途方に暮れました。
自分は確かにピラティスの知識は仕入れたけれど、目の前の「この人」にピラティスを伝えるには、何をどのように言葉にしたらいいのだろう。
教えたい「もの」はあっても、それをどう伝えたらいいのかがわからない。
これでは相手の時間を無駄にさせているだけだと思い、少しでも実りのある時間にするにはどうしたらいいかと試行錯誤するうちに、ふと気づいたのです。
教えるとは、目の前の「この人」をよく観察して、「この人」に合わせて行わなくてはいけないのだ、ということに。
私は「自分が教えたいもの」のことばかり考えていたけれど、「この人」のことを知ろう・理解しようという視点を持たず、一方的に喋っていただけだったのかもしれない。
相手がわかる・できるように、相手に合わせて、相手に届くような言葉を使って、伝え方を工夫しなくてはいけない。
つまり、教えるとは「相手とのコミュニケーション」なんだな、と悟ったとき、視界が急激に晴れました。
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たまたまですが、私たちは二人とも、ピラティス指導の道に入る前の人生で得た経験や知識がありました。
Yasuは長い会社勤めの中で、上司の立場から部下を効果的に導くためのコーチングを学んでいました。(その経験についてはいずれYasu自身が文章化してくれるかと思います)
私(Nahoko)の話をすると、身内に学校の先生が多かったので、「教えること」は常に身近にありました。
教職は目指していませんでしたが、高校時代に不登校の子供に家庭教師をした経験から心理学に関心を持つようになり、大学では教育学部で心理学を専攻。
最終的には「人間関係を円滑にするコミュニケーション技術」を研究するゼミにいました。
相手に合わせて教え方を工夫するとか、コミュニケーションをさまざまな視点から工夫するといった考えは、そのとき既に自分の中に存在していました。
この経験を活用しない手はない!というわけで、私たち自身で教え方を独自に工夫するようになると、すぐに「先生の指導はわかりやすい」と言ってもらえるようになっていきました。
どうしたらより良い教え方ができるのか、お互いの知識・経験を持ち寄りながらYasuとディスカッションを積み重ねて、現在の「Ola式指導メソッド」をまとめるに至りました。
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教え方とはコミュニケーションであるという信念を持ち、長期にわたる生徒さんとの信頼関係づくりに取り組んでいると、「この先生からずっと学び続けたい」と言ってくれるお客様が自然に増えます。
ピラティスができる場所は他にもあるけれど、こんなにわかりやすく親身になって教えてくれる先生はなかなかいない。
そんな風に言っていただくと、指導者としても本当に嬉しく、やりがいを感じます。
最近ではマシンピラティスへの注目度が高まっているようで、特に東京ではマシンを中心としたピラティススタジオが驚くほどたくさん増え続けています。
これほど多くのスタジオがあり多くの先生がいる中で、自分を選んでもらうために、何ができるでしょうか?
教え方がうまい先生になって、「どうしてもあなたから学びたい」と言ってもらうことができたなら、それは先生として最大の強みです。
自分のお客様にとって「この先生しかいない」という唯一無二の存在になればいい。
教え方・コミュニケーションを工夫するのは、お客様のためであり、インストラクター自身の幸せのためでもあります。
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「Ola式指導メソッド」には、私たちが考える「教え方・コミュニケーションのくふう」が詰め込まれています。
指導メソッドの「7つのエッセンス」は既にホームページに掲載してあるのですが、「実際どんなことをやっているんだろう?」と具体的な中身に興味を持ってくださる方のために、事例やエピソードなども交えつつ私たちの頭の中にある考えを少しずつ文章にまとめていこうと思いました。
「Olaのインストラクターってこういう人たちなんだ」と知ってもらえたら嬉しいですし、私たちと同様に「教える仕事」をされている方にとって何かひとつのヒントになってもらえたなら幸いです。
これから記事を少しずつ掲載していきますが、読んでくださった方と、「教える喜び」を共有できることを願っています。