スタジオセッション誕生の瞬間
Yasuです。
Olaと言えばスタジオセッション。日本では珍しいこのレッスン形式に出会ったときの話を、今年リニューアルしたホームページに書いています。(以下、抜粋)
2017年、レッスンのやり方について悩みを抱えた私たちが、さらなる気づきを求めて彼のスタジオを訪ねて出会ったのが、「スタジオセッション」というレッスン形式でした。
スタジオセッションを初めて見学したときの衝撃はあまりにも大きく、その光景は今でも鮮やかに覚えています。
Olaを知らない方、ピラティスを知らない方にはこのくらいの文章が適切です。だけど、この時の衝撃はこの簡潔な文章では表現しきれません。そして、スタジオセッションを見学して60分くらいで「うちでも絶対やる!」と思ったときの強い興奮も表現していません。なので、今回その瞬間の話をもう少し文章にしたいと思いました。
ロンドン出張
2017年8月28 日、ピラティスの研修としては初のロンドンへ。あらかじめ、僕らの師匠であるAmit Youngerさんにレッスンを見学したいということ、レッスンの受講、そして指導についてのQ&Aセッションを行いたいとの希望を伝えて行きました。
僕らの世界では、人のレッスンを見学することを「オブザベーション」と言って、このオブザベーションによってその人がどんなことを考え、どんな指導をしているかを知ることができます。
この時点では、スタジオセッションの情報は一切なく、8月29日の午前(8時~13時)にやっているから、「いつでも見に来ていいよ」とだけ言われました。記録によると10時少し前に行ったようです。
海外のレッスンでは、プライベートレッスンが終わるとすぐ次の人が入ることも珍しくないことから、8時からプライベートレッスンが5つあるのかな、という感じでいました。
人がいっぱいいるぞ、人がいっぱい来るぞ
テムズ川に面したビルの3階にAmitのスタジオはあります。建物はオートロック。インターホンを押して3階に向かいます。
Amitに会ったのは数年ぶりですが、レッスン中だったので、軽く挨拶をしてオブザベーションを開始します。すでにスタジオには4人のお客さんが。先生はAmitだけ。今のOlaのお客さまでしたらお馴染みの光景ですが、グループレッスンとプライベートレッスンしか知らない当時の僕らにとって、「???」という状態です。
- 「どうやら4人同時進行でレッスンが進んでいるらしい」
- 「4人のピラティスのレベルはバラバラみたいだね」
- 「4人は知り合いでもなんでもないみたい」
- 「それぞれの課題があるみたいだね」
オブザベーション中はNahokoと話すことはできないけれど、目をみると何を感じているのかが分かります。
10時丁度くらいに、インターホンが鳴り、次のお客さんがやってきます。やってくると、Yamuna Footで足裏をほぐして、ほぐしながらAmitと今日の挨拶。まだ、はじめて間もない方らしく「今日もここでやったらよい?」と質問して、いきなり動き始めました。
別のお客さんが着いたのか、インターホンが鳴ります。そして、このお客さんは会話好きで、話しながら自分のプログラムを始めていきます。「子供の学校が9月に始まるから、夏休みは終わってピラティス再開よ」
はじめて見るレッスン形式
どうやら30分毎に人がやってきて60分のレッスンらしい、予約はしているらしい、自分が行うベースのプログラムというのが決まっているらしい、それを行って直してもらっているらしい、などの情報がつかめて来ました。
- ピラティス初心者も、経験者も、同時にレッスンを受けていることがすごい
- 運動が苦手な人も、しっかり鍛えている人も、同時にレッスンを受けている
- 今の課題を繰り返し取り組んでいるっぽい
- 新しい課題を与えられている人もいるっぽい
Amitは僕らに構わずレッスンを続けています。午後、Q&Aの予約が取れているので、そこでいろいろ聞けば分かるのですが、話を聞かなくても十分でした。
2017年8月と言えば、Olaが開業してから3年4カ月目。スタジオの経営はそれなりに順調でしたが、3年通っている方とはじめての方が混ざるレッスンがしばしばあり、長く通っている方を飽きさせないためのレッスンが試行錯誤されていました。
ボールだけを使ったグループレッスン、セラバンドだけを使ったグループレッスン、フォームローラーのグループレッスン、スパインコレクターのグループレッスン、コアフィットネスローラー、リフォーマー、ジャンプボード、・・・
はじめての方も参加できる初級グループレッスンと、経験者向けの中級グループレッスンの時間配分も苦労していました。
お客さまが好まれる時間帯というのはだいたい決まっていて、その時間に中級クラスを設定すると、別の時間の初級クラスの予約は埋まりにくくなります。
そして、3年近く通っている方でも初級クラスを好まれる方がいて、その方と「今日体験です」という方を同時に教えるのは難しいの一言に尽きます。
また、僕らはリフォーマーのグループレッスンを通じて、お客さんの足に課題があるケースをたくさん見てきましたが、「足を直すと良いですね」というアドバイスはなかなかグループレッスンでは聞いてもらえません。正確に言うと、聞いてもらえるのですが、次の週には元に戻ってしまうのです。
ではプライベートレッスンを受けてもらえるかと言うと、単価が高い・・・そして僕らの時間もプライベートレッスンを全て引き受けていたら足りません・・・
「これって全部解決できるんじゃないの」
ランチでの興奮
僕は、新しいことを思いつくのは得意なものの、新しいことを行動することへは慎重なのですが、オブザベーション中に「うちでもやる」と思っていました。
Nahokoの興味がどうなのか気になっていましたが、ランチのために外に出ると、「うちでもやろう」「本当にできるかな」「どうやったらできるかな」という話に終始していました。
まずはスタジオのスペース、器材のレイアウト、4人入れるとしたらどんな動線で動いてもらうか?
当時、サブスタジオを持っていて、そこに追加すべき器材が揃っていたので、器材の購入は最小限で済みそうです。
4人同時平行でレッスンを行うことについては、マシンのグループレッスンで見る力、判断力、瞬発力がついていました。
「あとは、既存のお客さんをどうやって説得するか」
はじめてのQ&Aセッション
午後1時半。ふたたびAmitのスタジオへ。当時の記録では、当初用意した質問をすべて後回しにして、スタジオセッションを導入する前提でいろいろ会話が行われています。
3年4カ月の間に積みあがった悩みが、3時間あまりの間に動いた日でした。
Amitが当時の僕らにスタジオセッションを見せて、「君たちもやったら良いよ」と言いたかった訳ではありません。なぜなら、スタジオセッションという形式を真似たからレッスンが良くなるというものではないからです。指導の方針として
- 僕らがやりたいことをやるのは違う
- 僕らはお客さんのことを知って、改善することにコミットする
- お客さん自身が主体性を持つ
とAmitは語っています。この方針に最適な方法がスタジオセッションだったのです。
国民性の違い?それとも?
滞在中、再びオブザベーションを行いましたが、今度はお客さんの積極性に注目しました。どのお客さんも自分でエクササイズに取り組み、ほとんどのお客さんは分からない点があったら自分から聞いてきます。
これって国民性の違いかなあ?
と思って最初は見ていました。確かに国民性の違いもありそうですが、自分の課題を理解している様子に注目しました。
日本の場合、生まれ育った環境や教育、その人の性格によって反応が控え目な方も多くいらっしゃいます。僕らは外資系企業でその辺りの違いも感じていたので、国民性の違いがあるとしても、レッスンでうまく回せるのではないかと思いました。
グループレッスンで、お客さんの性格を含めた「個別性」に応じた指導を行うことは大変でした。逆にスタジオセッションになれば、控え目なお客さんとも上手くコミュニケーションが取れるのではという期待が持てました。
そして、この自問自答はプライベートレッスンにも活かされます。プライベートレッスンだからこそ、お客さんには自分ことを知ってほしい。従来、「プライベートレッスンだから全部先生におまかせ」するタイプの方がいたのですが、自分のことだから自分で考えて動いてほしい。Olaのプライベートレッスンも、この日をきっかけに変わり始めます。
コアアラインが使いこなせる
その年(2017年)、足のエクササイズをさらに拡張させ、立ってエクササイズを行うコアアラインの指導者養成コースに参加していました。コアアラインは、不安定なところへ立ってバランスを取るなどの直感的なエクササイズもあって、いろいろな可能性を秘めていました。
しかし、ただ楽しいだけ、新しいだけのレッスンには飽きが伴います。足の課題に向き合っていただき、地道なエクササイズを通して歩き方を変えるなどの地味な取り組みが必要です。
こうした地味な取り組みにスタジオセッションは最適でした。
スタジオセッションの誕生
2018年1月12日。従来のグループレッスンの大部分を廃止し、スタジオセッションに移行しました。従来のグループレッスンを引き続き求めるお客さまもいて、辛い決断でした。しかし、スタジオセッションを求めてご入会いただくお客さまがその後続きます。
スタジオセッションをはじめてみると、予想どおり、従来抱いていた問題・課題が一気に解消されました。それと共に、僕らの指導力・提案力や身体に関する知識、疾患についての理解などがよりシビアに要求されることを知ります。その後の研鑽については、みなさまの知るところですが、機会がありましたらまとめてみたいですね。
Amitのスタジオにて