「座りっぱなしが死を招く」(書評)
書籍『GET UP! 座りっぱなしが死を招く』ジェイムズ・A・レヴィン著、 鈴木素子訳の紹介です。
スタジオにはさまざまなお客さまがいらっしゃいますが、きっかけは運動不足や、肩こりの改善、腰痛の改善という方が非常に多いです。
そうした方に見られる共通の傾向は、デスクワーク中心のお仕事です。つまり座る時間が長いということですね。
僕もNahokoも会社員生活が長かったので、容易に想像がつきます。朝、席についてパソコンを起動、気が付いたらお昼・・・、気が付いたら夜・・・。会議中も座りっぱなしだし・・・。仕事のほとんどはメールのやり取り。
仕事の専門性があがり(役割分担が進み)、能力主義も徹底されてくると、チームでプロジェクトが進むとしても、個人として担当する仕事がたまります。その仕事をパソコンとの間でひたすら続けます・・・。このような1日を過ごしている方は多いと思います。
座ることは喫煙よりも身体に悪い・・・
という言葉を数年前に聞いたことがありましたが、この本はそうした研究を進めてきた著者の格闘ぶりが物語風に紹介されています。
統計的な結果として、こういう数値例が紹介されていました(括弧内は発表された論文の年)。
「1時間座るごとに、平均余命は22分間短縮する(2010)」
「日に11時間以上座っている人は、4時間以下しか座らない人に比べ、早死にのリスクが40%も高い(2012)」
22分って本当~?と思いましたが、仮に平日12時間、休日8時間を座る人が35年働いたと計算してみると、通算で5.7年余命が縮まるということだったので、あり得るシナリオだな~と思いました。
座りすぎによってリスクが上がるのは、糖尿病、肥満、心疾患、がん、鬱病、高血圧症、腰痛・・・(リストはまだまだ続きます)とも。
一方で、こんな研究結果も・・・
「食後に15分間歩くだけで、血糖値のピーク値は半減する」
忙しいとデスクランチで済ませていた当時の自分に聞かせてあげたい・・・。
ちなみに喫煙との関係については、社会全体として見ると喫煙者よりも座って過ごす人の絶対数が圧倒的に多いので、その意味で「あなたも健康のリスクを抱えていますよ~」と警鐘していました。喫煙も健康にとってリスクであることに変わりはありません。
座り続けることのリスクが分かったとして、個人として対応できることは限られてしまいますね。
この本では、立って仕事をする例や、新しい授業スタイルの学校の例が紹介されていますが、いずれも会社や自治体の強力があってこその対策です。
私たちのお客さまの中にも、会社が対策をしてくれて、立って仕事(スタンディングデスクを利用)している方がいらっしゃいますが、そうした例は稀で、大半の人は時々出歩いて休憩をとるとか、週に1回スタジオに来るのがやっとという方が多いです。
僕も会社員時代の一番忙しいときだったら、座ることのリスクを知ったとしても、生活習慣は容易に改められなかっただろうと思います。
習慣を変えるのは、なかなか難しいことです。
僕らの脳は安全・安心を求める性格の持ち主であることから、これまでやってきたことを変えることには抵抗すると言われています。なので、座りっぱなしは安全ではないということを、こうした本を通じて認識することは大事だと思います。
健康リスクについて数値で知ることも意味がありますし、座りっぱなしが運動神経を鈍らせてしまうと知ることも意味があります。
実験によると、座りっぱなしにより、脳から筋肉への信号が減って、脳の運動野と呼ばれる場所が委縮してしまう可能性があるのだそうです。また運動不足はストレスを増加し、コルチゾールと呼ばれるストレスホルモンの分泌を増やす結果、食欲が増進して太りやすくなるのだそうです。
このことから、「座る=運動していない」時間を「座っていない=運動している」時間に換えることは、かなり意味がありますよね。
ピラティスができることは、この時間の変換以外にもたくさんあります。
この本では「座る時間」の長さを問題にしていますが、「座り方」が問題の方もたくさんいらっしゃいます。
Olaピラティスでは、良い姿勢とはどんな感じで、どの筋肉を鍛えたらよくて、日常の生活ではどんなことを意識したらよいかということをレッスンを通じてお伝えしていきます。
姿勢のお話は、記事でも時々触れていますが、大事なポイントは
良い姿勢を知って、その姿勢に自分をあてはめるのではなく、
どのようにして、良い姿勢に近づけるか
です。良い姿勢「what」と言われている形に持っていくのではなく、どうしたら「how」その姿勢を無理なく維持できるのか、そして、そのためにどのように「how」鍛えたらよいのか、が大事です。
(Yasu)