構造を知っただけで動きが変わる
先日公開したコラムの記事(Part 1 / Part 2 / Part 3)でも触れましたが、私たちは『足・脚トレ』を非常に重視してプログラムをご提供しています。
足が正しく使えるよう導いていく中で、よく聞かれるコメントはこんな感じ。
・意識したこともなかったのでよくわからない
・意識しようとしてもうまく行かない、違うところに入ってしまう
つまり、何をどうやってやったらいいの?どこに力を入れて、どんな感覚で、という「HOW?」の部分がわからない、難しいということですね。
これは、ピラティスのように「正しい・適切な身体の使い方」をふまえて指導しようとするときには必ず生じる課題なんじゃないかなと思います。
今が「身体が正しく使えていない状態」だとして、初めて経験するやり方を教えようとしても、脳がすぐについて行かない場合もあるし、脳からの指令が身体にうまく行き届いてくれなかったりもします。
結果、よくわからない、うまくできない、難しい、面白くない・楽しくない、と感じてしまい、それに取り組み続けていこうという意欲にもつながりにくくなってしまいます。
中でも、「足」は動かすことが難しく感じられる場所の代表格で、「足をどう動かすかなんて人生で一度も考えたこともない人」の方が普通ではないでしょうか。
難しくてつまらなくなりがちなトレーニングの「How?」の部分をわかりやすく教えるのが、私たち運動指導者のスキルであり、腕の見せ所なわけですが、わかりやすくするひとつのアプローチは
「構造を知ること」
だと思っています。
先日、【足・脚トレ】のコラム記事 3回シリーズでも触れましたが、構造を理解するために活躍するのは、骨格模型です。
こういう実際の足は、
骨格を見るとこうなっているよ、という話。
私は骨格模型を眺めて触るのが大好きなのですが、足の構造を見ると歩行動作がどう行われているのか大体の見当がつきますし、立方骨が要石だといわれる理由もすんなりと理解できます。
そして、この骨格模型が足の使い方をどう修正するかをとってもわかりやすくしてくれます。
かかとの骨ってどこにある?どんな位置?
かかとの骨からつながってるのはどこ?担っている役割は?
内側アーチってどこ?アーチはどうしたら上がるの?
内側アーチが落ちると、つながる骨たちにはどんな影響がある?
足の5本の指はどう分かれている?それぞれ何とつながっている?
つながっている場所が違うと、担っている機能はどう違う?
たとえばこういう感じのことを足の構造を見せながら解説すると、みなさん一様に
「えーーーー、知らなかった!」
「そうか、確かに自分はそうなっていた」
「そうか、じゃあこういう風に使ってみたらいいのか」
「すごく違和感があるけど、安定しやすい!使いやすい!」
「つまりこういうことだったのか!急にわかった!」
という感想が聞かれますし、「これは何の魔法?」と言われたこともあります。
教える側からしてみると、魔法でも何でもない当たり前の話をしただけ。
私たち人間の身体が元々持っている構造を「正しく知って、正しく使える」よう脳にインプットし、「本来の機能」を引き出してみただけです。
変わる力・できるようになる力は、つまりその人自身が持っている・その人の中にある、とも言えるかもしれません。
脳に情報がインプットされれば、どんな感覚でどこを使えばいいのかが自然にわかってきます。
そして、悩んでいた足のトラブルのあんなことやこんなことが、「そういう原因だったのか!」と腑に落ちるため、急激にやる気につながる方も多いです。
自分が悩まされているものの「正体」がわかり、戦うためには何をしたらいいのかがわかれば、あとは続けて取り組んでさえいれば時間が自然にゴールに連れて行ってくれます。
構造がわかっただけで、動きはいきなり変わります。
今まで感じられなかったことを感じ取ることができ、見えなかったものが見えるようにもなります。
そして、思ってもみなかった可能性が急に広がり始めます。
人間の脳は、本当に面白いですね。
ところで、指導者として常に気を付けているのは、説明のしかたがあまりにも「難しい学問の授業」にならないようにすること。
正確性は大事ですが、せっかく骨格模型を活用していても、たとえば難しく聞こえてしまいがちな専門用語を使いまくってしまったら、退屈な時間にしかなりません。
いかに面白い!興味深い!と思ってもらえるかを考えて、わかりやすく説明するのが私たちの仕事。
スキルアップと引き出しを増やすために様々な勉強を日々続けていますが、学べば学ぶほど、自分自身も面白い!興味深い!と感じるし、面白い勉強ができていることが嬉しいしで、全く苦ではありません。
こんなに楽しい仕事に出会えて本当に良かった、と思っています。