健康への「投資」を考える
私(Yasu)は前職で金融業界にいました。資産運用が専門で、プレイヤーとしてもマネージャーとしても育ててもらった業界です。投資についての教育やセミナーなども行なっていました。
お金には「投資」と「消費」という言葉があって、たびたびその違いについて語られます。投資とは、何かにお金を託して将来の見返りを得る行動。消費は、何かを得るためにお金を使うという行動。
具体的なイメージでは、
投資 → 株式への投資、資格を得るための投資
消費 → 買い物への消費、旅行への消費
などがあります。
見返りは、一般に「リターン」と呼ばれていて、リターンが大きいほど投資効果が大きかった、などと言われます。
ちなみに「消費」においてもリターンはあって、ヨーロッパへ旅行した思い出がその後の人生を豊かにした、などの例を挙げれば、一般に消費と呼ばれる行動も、その人にとっては「投資」だったということになります。なので、「投資」と「消費」は、表向きの行動で判断するのではなく、その人の『意図』による要素が少なくありません。
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前置きが長くなりましたが、健康のための運動にも「投資的」なものと「消費的」なものがあると思います。
たとえば、投資的な運動では
・高齢になっても元気に活動できるために今のうちから運動する
・慢性的な肩こりから脱却するために運動する
・ゴルフのパフォーマンスを上げるために基礎トレーニングをする
たとえば、消費的な運動では
・みんなと楽しく運動する
・今、流行りの運動を行ってSNSでシェアする
・たまに気が向いて運動する
お金のはなしで「投資」か「消費」かは『意図による』と書きましたが、健康のための運動では
・将来の身体とこころのため
・現在の身体とこころのため
・継続的に行う、積み重ねる
という意図があるときに「投資的」で、それ以外は「消費的」と分類できるように思います。
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お金のはなしにおいても、健康のための運動においても、「投資」も「消費」も両方が大事です。どっちが良いという話題ではありません。
大事なのは、どういうバランスで行っていくか、だと思います。
月々や年単位の収入のうち、何割を投資(ここでは貯金も含めます)にあてて、何割は消費にするか、という話があるように、運動においても投資として行うものと消費として行うものが、頭の中で整理できているかは重要です。
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さて、Olaで行うレッスンのほとんどは、自分でピラティスを覚える、自分だけでもピラティスができるようになる、ことを目標としています。
インストラクターの指導は、グループに対して動きをリードするのではなく、ひとりひとりが抱える課題に対して提案する、ことに重きを置いています。
わたしたちも、ピラティスをはじめた初期の頃はグループレッスンをたくさん受講しました。グループレッスンの良いところは楽しさです。ハードなレッスンになると、グループで達成した到達感も味わえます。一方で、自分が抱える目標について考える時間がありません。
では、プライベートレッスンは良いかと言うと、自分がインストラクターを占有することができますが、自分一人で身体を観察したり動きの再現を試みるという経験は得られません。インストラクターが指図するエクササイズに質問する間(ま)もないまま、動くだけの自分になっていたという経験もしました。
お金の「投資」は、最終的に自分で考え、自分で行動するものです。金融機関が薦めるまま投資をするという事は、一般に良くないことだと言われています。
運動も同じ。インストラクターから提案されたものは、自分に合っているか?、いまの自分に必要か?最終的に自分で判断して行えるようになることが、とっても大事だと思うのです。
いま行っている運動、これからはじめようとする運動は、
・「投資的」か「消費的」か
・その運動を行うことで、自分の「投資:消費のバランス」は崩れないか
・「自分に合っているか」「いまの自分に必要か」
・「自分で考える(振り返る)チャンスがあるか」
こういう視点で、考えるようにしてはいかがでしょうか?
Yasu
【編集後記】
健康を「投資」「消費」という視点で書いてみました。
年を取っていくほど、自分に残るのは自分の身体です。つまり身体は「資産」そのものです。
金融における投資と消費は、自分のお金をどう振り分けていくかという選択問題です。今ある(入ってくる)お金は限りがありますが、お金は稼いだり投資することで増える可能性があります。
健康における投資と消費は、自分の時間をどう振り分けていくかという選択問題です。時間は有限で、今の時間は増えることはありません。
この点から言うと、健康のための選択問題は、お金よりもシビアであるということが窺えます。
お金も健康も共通点がありそうだと興味を持っていただけたら幸いです。わたしたちの時間は、将来の健康という資産のためにあります。資産形成を行うという思いで、運動する時間を大切に使っていただけたら嬉しく思います。