スキーの前後荷重(身体の構造との関係)
Yasuです。今年のスキーシーズンは、菅平高原とブランシュたかやま(いずれも長野県)の2ヵ所メインで楽しんでいます。
僕のスキースタイル
私、ずーっと基礎スキーを行っていまして、スキーに行くとつい技術の習得に励んでしまいます。基礎スキーとは、1級などの検定試験を受けることを目的にするスキーです。実際に検定を受けなくても、そういう「スタイル」で滑ることを基礎スキーと呼んでも良いでしょう。
1級は15年くらい前に取りました。1級の上はテクニカルと呼ばれる技術系の資格か、指導員の資格があるのですが、あまりのハードルの高さに受験せずに今に至ります。ピラティスの資格取得と開業の時期と重なった時期も理由ですね。
受験はしないけど、スキーのパーソナルレッスンを受けて、技術向上のための情報に触れ、黙々と練習していました。
ロングターンの前後荷重の議論
スキーの技術論は、時代や時期によって内容が変わることがあります。用具の進化や、レースでの技術進化などが関係するのでしょう。
例えば、北京オリンピックで金メダルを取ったスイスのオダーマット選手。テレビの解説で、「他人よりも高いポジションからポールを狙うので速い」と話していましたが、従来、重心は低い方が良いと言われていた印象があります。トレーニングの進化もあり、重心が高くでも強い体幹でコントロールが出来るようになったのかもしれません。従来の方法を打ち破って新しい技術が生まれるのは、スキーに限ったことではありませんね。
さて、スキーの技術論のうち、ロングターン(大回りなど)の足の荷重はどこが良いのか、という議論をしばしば耳にします。「フットセンターに乗るべき」「踵荷重」「拇指球(前足部)に乗る」など。「ターン後半は、踵荷重」と言われたのが数年前に教わったことです。
スピードスケートからのヒント
NHKの「奇跡のレッスン」という番組(2021年3月放送)で、清水宏保さんが高校生に指導する場面を見ました。スピードスケートは、シューズの中で踵寄りに荷重するのが基本という話がありました。なぜなら、シューズのつま先寄りに乗るとスケートの刃が進行を妨げてしまうからだそうです。
「これってスキーも同じじゃん」と思いました。ターン後半に踵寄りに乗ると、スピードを落とさずに次のターンの準備に入れるということです。逆にターン前半に、つま先寄りに乗ると、スキーのトップが雪面を捉えて減速してくれるということになります。ターン前半にコントロールが必要な場面で、つま先寄りに乗ると良いというのは、僕の実感に合っています。
足の荷重についてみなさんはどう行っているのか意見を検索してみると、レース系の方が踵寄りと話す傾向にあるのに対し、基礎スキー系の方がつま先寄り(またはターン前半はつま先寄り)と話す傾向がある印象を受けました。
足のしくみと荷重
私たちの足は関節がたくさんあります。足首には2つの関節があり、その働きにより、足首の曲げ伸ばしにより足裏の荷重位置が変わります。
- 足首を曲げると若干踵寄り・外側に荷重
- 足首を伸ばすとつま先寄り・内側に荷重
スキーでは足首は伸ばさないので、「足首を曲げる」場面と「足首の曲げを戻す」場面を考えることにします。
この荷重位置の変化を感じ取るために、スタジオにあるギズモという器具を使って写真のようにスクワット運動を行います。足裏で地面を感じたまま重心を下げていきます。重心を下げていくと、足裏の荷重位置が若干踵寄りに移ることが分かります。足の内側・外側で区別すると、外側に乗っていくのが分かります。
ギズモを使う理由は、足のアーチを崩さないためです。足首を曲げると足のアーチが崩れてしまう人が多く、アーチが崩れると足裏の荷重位置(の変化)を読み取ることは難しくなります。
重心を下げるときは、足裏の地面を素直に押す感覚で行います。重心を下げると踵にしっかりと乗ってしまう(つま先が浮いてしまう)方は、板に体重が乗せられない、いわゆる後傾姿勢の可能性があります。
なお、ギズモは足裏のトレーニング器具です。これについては、改めてご紹介する機会があると思います。
スキーへの応用
「足首を曲げる」→「スクワットでの荷重」→「スキーでのターン後半」と捉えることにより、ターン後半は踵寄りの外側に荷重するということは、足のしくみとの親和性が高いことがうかがえます。
逆に、ターン前半に移行するときに、足裏の荷重がフットセンターに戻ることも合理的だと思えます。ターン前半で雪面からの反力を大きくしたい場合には、フットセンターを通り越してつま先寄りに乗ると良いでしょう。スキーが減速し、スキー操作が行いやすくなると考えられます。
踵寄りになるとき、内側ではなく外側に乗るメリットもあります。膝が骨盤に対してまっすぐに保たれていれば、大きな筋肉である臀筋との力のつながりが感じられます。
切り返しのメリット
ターン後半の踵寄り荷重には、板を返しやすいというメリットがあります。切り返しで、板を内エッジから外エッジへ返す動きを行う場合、踵寄りで行うのとつま先寄りで行うのでは、踵寄りの方がやり易いのは試してみると分かると思います。
これは、踵の骨は1つであるのに対して、つま先を構成する骨は指の数だけあって、決して1つの構造物ではないからです。踵の骨を利用することで、切り返しのイメージがつかみやすくなるだけでなく、タイミングやスピードもコントロールしやすくなります。
しかも、踵寄り荷重の外側に乗っているということは、踵の骨の外側が動きの支点にあたるので、切り返し動作はとてもスムーズです。
「踵寄り」とはどの程度のことを言うのか?
最後に注意したいのは、僕のイメージでは踵寄りに荷重するのであって、踵ではないということです。
本当に踵まで荷重してしまうと、その後にフットセンターまで戻すのに時間がかかるし、再現性も落ちるので、あくまでも「踵寄り」なのです。ではどの程度「寄り」なのかに対しては、自分で滑ってみて感覚や好みを掴むしかないと思います。滑り方の違いや道具も違うので、自分にとっての程度を見つけることは必要です。
2022のスキーシーズンは、今回お話したことをテーマに取り組み、ロングターンの引き出しが増えました。ピラティスのトレーニングと足の勉強がこういう形で役立つとは、思っても見なかったので、とても面白いです!